すると、横川さんは、うふふと笑う。
「あら。星月に話すのを忘れるぐらい不安で仕方ないみたいね。明日の試合」
「不安?蓑島くんが?」
そんなに面白いのか、横川さんは笑いを堪えきれずに漏れている。
いや、もしそうなら、ある意味面白いのはわかる。
蓑島くんが不安?
いつもドヤ顔とか意地悪な笑みとか、余裕たっぷりのキラキラスマイルを浮かべている蓑島くんが?
何でも見透かしているようなポジティブシンキングな蓑島くんが?
何を考えているかわからないと思わせる、突飛な行動を起こす蓑島くんが?
思い付いたらすぐ実行の蓑島くんが?
…そんな蓑島くんが、不安?
不安に…なるの?
「…明日の試合はね、ジャイアントキリングなの。相手は北甲高校。今年春夏連覇してる老舗の強豪校」
「えっ!」
チャンピオンチーム?!
「もし勝てれば、次に決勝で当たるだろう高校にはどっちも練習試合で勝ってるし、明日勝てれば絶対勝てる。だから、うちにとっては明日が事実上の決勝戦」
「そうだったの…」
「だからかな?悠介も緊張してるのよ。今もぶんぶんバット振ってる」
「緊張?!」
蓑島くんが、緊張?!
あれだけボディタッチしてきても、ヘラヘラしている蓑島くんが?!
意外…!



