カバンの中からは、ポーチがチラッと見えている。
蓑島くんがプレゼントしてくれたポーチ。
花柄でもズベタうんこ柄でもない。
至ってシンプルな、アウトドアブランドのロゴが入った、無地の黒いポーチ。
それを目にしては、顔が緩んでしまった。
蓑島くんはやはりセンスが良い。
ポーチひとつでもオシャレで、貰った方は何か嬉しい…。
「…星月」
名前を呼ばれて、ハッと我に返る。
夢から覚めたかのように。
声の方向を慌てて探そうと辺りを見回す。
キョロキョロとしていると「こっち!俺だ」と、再度声を掛けられる。
「…あ、瞳真」
教室後方の出入口から、瞳真が顔を出して私に手招きしている。
瞳真がこの教室に来るのは久々だ。
少しばかりの緊張感を持って、席を立ち赴く。
…蓑島くんが『偽物』の彼氏になってから。
少しずつだけど、瞳真と緊張せずに喋れるようになった。
と、いうか…いつも付いて回るあの切なさが無くなった。
瞳真はキョロキョロと教室内を見渡している。
何かに警戒してるような仕草だ。
ひょっとして…。
「…蓑島くんなら、伊野くんたちとサッカーしに行ったよ」
「………」



