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「…うおぉーっ!…伊野っちに彼女出来たぞぉーっ!」

「…バカ!声デカい!」




昼休みもこの男の声が響く。

みんながお弁当を食べているその教室内に響き渡り、全員が振り向いた。

視聴率100%。



え?伊野くんに彼女?



「こんな真っ昼間から『好きだよ❤️』『私も大好き❤️』だなんてLINEしとるでー!」

「蓑島あぁぁっ!急に後ろからスマホ見るな!バラすなあぁぁっ!」

「でも名前見えんかった。誰?誰?スマホ見せて」

「だ、ダメ!ダメだ!」



教室の後ろで、伊野くんと蓑島くんがじゃれ合っている。

というよりも…伊野くんの持っているスマホに蓑島くんが手を伸ばし、それを必死で阻止する伊野くんとの攻防。



「え?マジ?マジ?」

「どゆこと?…伊野おぉぉ!」

「場合によっちゃ殺す!」



蓑島くんの大声で一言をきっかけに、クラス中の男子がバラバラと伊野くんと蓑島くんの周りに集まってきた。

そして、十人ほど集まった男子みんなで「どういうことだ!」「どこの誰だ!」「名前を教えろ!」「可愛いの?」と、伊野くんに対して次々となぜか必死に質問責めを始める。

突然囲まれた伊野くんは、スマホを握りながらあたふたし始めた。



「あ?…あ?!…あぁっ!もうっ!…蓑島あぁぁっ!」