すると、予鈴が鳴り、担任の先生も「始めるよー!」と教室に入ってくる。
蓑島くんも「じゃね」と、自分の席についた。
(………)
その会で、一番盛り上がった話とは。
やはり…蓑島くんのことだった。
『っていうか、何なの?あの超イケメン彼氏!あんなにカッコ良すぎるイケメン、初めて見たんだけど!』
『え?え?何?星月、彼氏いんの?!』
『こないだ会った時、デートしてたんだよ?!』
『え?ひょっとして部員?選手とマネ、鉄板の恋…!』
『いや、蓑島くんは野球部』
『えぇっ!坊主じゃなかったしょー!』
『真琴なんてさー?「まこっちゃん、髪長い方が似合うと思うよ?」なんて、顔近付けて言われてさー?人の彼氏にテレるキャプテン。ぶっ。人の男に惚れんなよ。おまえ』
『…いつきぃぃっ!…っていうか星月、何なのあの男…』
真琴は赤らめた顔を隠して、がっつりと俯いていた。
私の見てないところで、私の友達に必殺女殺しやめてくれる?
いやいや、妬いてるワケじゃないですが。
だって、蓑島くんはそういう人ですから。世紀の人たらし。
男子に対する免疫のない私の友達をイジらないでくださいってこと。
でも、私の心の氷を溶かしてくれて。
前に進むことが出来て。
私、蓑島くんに助けられて、何でもしてもらってばかりだな…。
その溶けた氷の水は、やがて心地の良いぬるま湯となる。
後ろの方の席にいる蓑島くんを、チラッと見る。
蓑島くん。
お礼やお返しじゃないですが。
私が、してあげられること、ないですか…?