「星月」
「…ん?」
苦笑いをすでにやめていた斗弥子は、立っている私を見上げて言う。
その顔は、笑ってなくてちょっと真剣な…。
「…あんた、ハマってないよね?悠介に」
「はっ?!…ハマるか!あんなセクハラ大魔王!」
…と、イライラの勢いで断言したもの。
だよね?と、自分に言い聞かせている自分がいた。
…ハマってないよね?私。
始業式からこれまでの一週間、本当に濃密だった。
瞳真と美優の件があって、蓑島くんからのオファーを受け。
そしたら、ファンに嫌がらせされるわ、デートに出掛けたらいろいろあるわで。
…でも、九月に入った途端。
ドタバタしていた日々が、急に穏やかになる。
野球部もサッカー部も公式戦が始まって忙しくなったからだろうか。
まあ…穏やかとは言っても、私と蓑島くんの関係は相変わらず。
朝練も終わり、着替えて教室に到着する。
教室の前には、ちょっとしたよくある光景が目に入った。
女の子の人だかり。
…女子だかり?
「蓑島くん、おはよー!朝からステキ!」
「今日もカッコいいー!」
「皆さんおはよー!」
黄色い声を出す女子が囲んでいる輪の中心は、マイハスバンド。
…いいえ。
蓑島くんだ。



