ふとこっちを振り返った蓑島くんは「おっ!」と声をあげ、ギョッとしている。

「な、泣いてんの…?」

「………」


すでに、目から涙がボロボロと溢れてしまった。



何でかは知らないけど。

蓑島くんの顔を見たら、安心してしまった。



人前で、涙を見せたくなくて強がっていた私のはずなのに。

何でこうも、蓑島くんの前だと簡単に泣けてしまうんだろうか。




「…蓑島くん」

「何?」

「さっきのこと…何も聞かないの?」



蓑島くんが、さっきの話に触れてこない。

さっきの真琴との話も黙って聞いていたし。

それが、気を遣われているようで、どうも違和感だ。



そんな蓑島くんは、タピオカミルクティーをずるずると啜っている。

「あ、ストローに詰まった」と呟いていた。

空になり、タピオカだけが残ったプラカップを足元に置いて、こっちをチラッと見た。



「…だって、女同士のケンカでしょ」

「け、ケンカ…」

「ありゃケンカでしょ。だから、男の俺が口挟むのも何かなって。…でもさ?」



そう言って、私との体と体の空いていた距離をグッと寄せて詰めてくる。

急にグッと近付いてきたので、体をビクッと震わせてしまった。

ち、近い…。