「じゃあ、一番最初はおまえが歌えよー?」
「俺は歌わない。みんなの聞いてる」
「あはは。…カラオケ屋ではまず歌え!」
みんな、楽しそうに喋りながら歩いているのを、じっと陰で見守る。
横断歩道を渡り、姿が見えなくなった。
行った…。
ホッと一息つく。
っていうか、何で私、瞳真たちから逃げてるんだろう。
逃げて、逃げて。
逃げてばっかりだ。
顔を上げられず、下向きになる。
再び手すりに腰掛け、俯いてうなだれた。
頭の中で考えることは、さっきのこと。
『大丈夫』と言い続けたことで、今まで言えなかった本音。
昔のこと…みんなやサッカーそのものから逃げていたこと。
しばらく、一人で考えては思い出す。
だけど、思い出すと涙が出てきそうになる。
…あの時。
蓑島くんが『強がらなくていい』って言ってくれたことを、思い出しちゃって。
思わず言ってしまった…。
(……)
こんなとこで一人でいても、しょうがない。
まず、蓑島くんに連絡しなきゃ。
置いてきちゃってごめん、みたいな。
カバンからスマホを取り出す。
…だけど、求めていると、必ず来てくれる。
ふと、顔を上げると。
なぜかそこに、彼はいた。
「やっぱり、ここにいた」
「蓑島くん…?」



