「…あ、何でもない、ごめん」
「何でそんなに力んでんの?」
そう言って蓑島くんは、私の下ろしたまま握って震えている拳を指差している。
指摘されて慌てて拳を後ろに隠す。
「…何か、怯えてんの?」
…どうして、この人にはわかるんだろう。
何で、この人は…私の心を見透かすんだろう。
ふう、と一息つかれる。
「…じゃあ、スタバでカフェラテでも飲みますか?行こ行こ」
「あ、うん…」
「お話は、そこで」
そして、ニコッと笑いかけられた。
変に思ったのかもしれないけど。
私が何かを言いたかったのは、わかったんだろう。
でも、変に気を遣わせたかもしれない。
笑顔がその証拠だ。
どうして、本当にこの人は…。
「…あれ、星月?」
蓑島くんの後に続いて歩き出そうとした、まさにその時。
自分を呼ぶ、懐かしい声を耳にしてしまい、足を前に出せなかった。
「…星月!星月だよね?!」
何で…。
…何で、ここで。
こんなにも、タイミング良く。
「…え?!嘘っ!…星月だ!」
「髪伸びてるからわかんなかった!星月!久しぶり!」
…会ってしまうんだろうか。