「そろそろお茶でもする?」

「お茶?」



流れ流れて、駅のコンコースを二人で歩く。

私の買ったものが入った紙袋を持って、少し先を歩いていた蓑島くんが振り返って尋ねてきた。



「足、疲れてないの?」

「え?大丈夫だよ?」

「ほら。ケガした右膝。歩いて酷使させてたら、水口にまた「おまえ!」って怒られそう」

「あ…」



その話は…あんまり話したい話ではない。




…でも、蓑島くんには言っておいた方がいい。



そう、思ってしまった。




「蓑島くん…」

「ん?」

「あのね、ケガした膝、本当に何ともないの。完治してるし、リハビリも終わってるから。後遺症もないの」




…こう、言い切ってしまえるようになったけど。

その続きを聞かれるのが、恐かった。




「………」



蓑島くんは、じっとこっちを見ている。

いつもの笑顔ではなく…きょとんとしている。





《じゃあ、何で…》





その続きを聞かれるのが、恐い。





「…どしたの?」



声をかけられて、ハッと我に返る。

気付いたそこには、至近距離の蓑島くんが。

きょとんとした表情のまま、私の顔を覗き込んでいる。