「ここは俺的にはあえてのパープルだなー?」
「じゃ、じゃあそれにします…」
この緊張から早く逃げ出したくて、テキトーに返答してしまった。
「え?試着しないの?着て着て」
「は、はい…っていうか、顔近い!」
試着を理由に蓑島くんから離れるが。
そんな彼は、ブッと吹き出して静かにクスクス笑っていた。
チラッと悪そうな笑みを見せながら。
恐らく、わざとだ。
また、私のベタなリアクションを楽しんでるに違いない。
悪いヤツ…!
…店員さんに声を掛けて試着させてもらったワンピースは。
着てみると、思ってた以上にサイズ感もよくて、膝も隠れるし。
何より…普段オシャレをしない私が、これを着ただけでオシャレに見えるのが、期待以上でビックリした。
これが、高い服のチカラ…!
蓑島くんも「似合う!可愛い!」と言ってくれた。
でも、残念ながら、褒め言葉の大売り出しをしている蓑島くんの発言は、信憑性はなく…。
でも、店員さんに「背が高いんで着こなせてますねー?」と、言われると、ちょっと自信もついたりなんかしちゃって。(…いや、この御方も仕事ですけど)
こういうオシャレなお店で、初めて服をお買い上げしてしまった。
初めての体験をした。



