「あ、そうなんだ…」
「…そうなんだじゃなくね?」
「え?」
蓑島くんは、持っていたポーチを再び私に差し出す。
そして、ポーチを裏返した。
あ…。
《ミスターと別れろ!》
ポーチのど真ん中に、デカデカと殴り書きしてある、その罵声が目に入った。
「…何で話してくれなかったのかな?なんて憤りもある」
「あ、それは…」
ズベタうんこ女を知られたくなかったから。
…って、いうのもあるけど。
「…俺に言っても仕方ないとか、思っちゃった?」
「あ…」
「フリの彼氏だから?」
うっ。
何だか、心見透かされてる。
図星で言葉に詰まってしまった。
蓑島くんの表情を伺って、チラッと見るが。
怒っている顔でも、暗い顔でもなく、至っていつもの余裕綽々感のある様子だ。
ちょっとホッとする。
憤りとか言っていたから、怒ってたらどうしようと思ってしまった。
…私、大丈夫だよ。
と、言いたいところだけど。
あの場は蓑島くんに助けられてるから、何も言えない。
だけど、この男は、何もかもを見透かす。
「…大丈夫だよ、とか思ってる?」
「えっ!」



