「…でも、星月を転ばすのは許せなかった」
「え…」
不意の一言にまたしてもドキッとさせられる。
「星月の右膝。手術してんのに…サッカーだけじゃなく、マネージャー業や日常生活に影響出たらどうすんだよ。」
「あ…」
…いや、わかってる。
変な期待をしそうになっていたことに気付いて、恥ずかしくなった。
瞳真が私に…なんて。
それは、ないのに。
瞳真の中では、私はかつてのチームメイト。
他のチームメイトの男子と一緒。
それは…。
『星月、ごめん…』
…あの出来事が物語っている。
「…あ、あのぐらいなら大丈夫だよ!だから瞳真もそんなにカリカリしないで!」
「蓑島にもカリカリすんなって?」
「そ、そ、そう!蓑島くん、ふざけてるけど、面白いし人だし!」
「ふーん…」
…あ、しまった。
瞳真、ちょっと不機嫌になってる。
蓑島くんが得意じゃないって言ってるのに、蓑島くんを褒めるようなことを言ってしまった。
あぁぁ…私、失敗した。
「と、とりあえず、昼の練習にね!」
「…わかった。じゃ」
そう言って、瞳真は隣の二組に入って行く。
こちらを振り返らずに。
…そう、瞳真は私を見ない。
『女』として。
私は、『仲間』であって。
『女』として意識されることはない。
追憶の味は、とても苦くて。
踏ん張らなかったら、苦すぎて涙が出てくる。
…こんな思いをするなら、気付かなきゃよかった。
瞳真のことが…好きだなんて。