教室の出入口に、少し寄りかかったように立っている。

背が高く、その甘いマスクともいえるいかにも美少年な顔立ちの男子生徒は、こっちを見ていた。



瞳真だ…。



隣の二組の瞳真が私のところにやってきた。

用事は…と、聞かなくてもわかる。

恐らく、部活のことについて。

…じゃないと、私のところになんか来ない。



ドキドキする心臓を押さえながら、平静を装って振り返って返事をする。



「…あ、はい!」

「ちょっと」



瞳真に手招きされて、私も教室から出ようと立ち上がって。

一歩、足を踏み出した。



…その時だった。



「…きゃあっっ!」



踏み出した足は、何かに絡まって進行を阻まれた。

途端に真っ正面から、バーン!と転んでしまう。

目の前の机に衝突し、机もろとも転がってしまった。



「…星月!」

「あいたたた…」

「杉久保さん!大丈夫?」



周りにいたクラスメイトが、見ている中。

「あ、大丈夫大丈夫…」と、机を持ったまま体を起こす。



何だろ?足に何か絡まった?

痛たた。胸とお尻打った。



振り返ると、不自然にそっぽを向いている男が一人…。



え…ひょっとして。

まさか、この人…!



「み、蓑島くんっ…?」

「………」



彼はそっぽを向いたまま、不自然に口笛を吹いていた。

何その反応、白々しい…!



「もうっ!蓑島くん、足掛けないでよ!」

「えー?知らないー?何のこと?」

そして、また口笛を吹いている。

うわっ。その知らないフリ、ベタすぎる…!