とりあえず。
恋人気分を味わうだけ。
蓑島くんには、本気にならない。
「星月!」
5時限目が終わるとすぐに、私のもとに来客が現れる。
その声を耳にする度に、つい胸を弾ませてしまう。
「…あ、瞳真」
…でも、今は切ない。
席を立って、廊下へ赴く。
ドアの傍に立っていた瞳真の手には、私のスコアブックが。
「…これ、早霧谷さんから『確認しとけ』って俺に回ってきたんだけど。見たら星月に返しとけって」
「あ、うん。ありがと」
差し出されたスコアブックを受け取る。
紫苑先輩から直々に…瞳真、期待されてるんだな。
それを知ると、ちょっと嬉しくなってしまう。
「今じゃなくても、部活の時でいいのに」
「…昼にも来たんだけど。おまえいなかったし」
「あ、そうなの?!」
「…庄田に聞いたら、蓑島とどっか行ったって言われたから」
「えっ…」
斗弥子に?…そっか。斗弥子たち、屋上に来る前に、瞳真と会ってたんだ。
何も聞いてないんですけど…。
って、いうか。蓑島くんとどっか行ったとか、はっきり瞳真に言わないでよ!
瞳真は何も気にしないかもしれないけど、私は気分的にまだ…。
瞳真のこと、諦めるとは言ったけど…。



