「…ゆらもそれをわかっていながら、ずっと傍にいて離れないし。星月、男経験のないあんたの手に負える相手じゃないよ?」
「わ、わかってるよ!」
「とりあえず!…悠介に本気になったらダメ。せいぜい偽彼氏の偽カップル、恋人気分を味わう程度にしときなさい。…いい?」
「う…」
斗弥子の話はやたらと説得力があって。
迫力に押され「はい…」と返事するしかなかった。
(恋人気分を味わう…か)
昼休みも終わり、授業が始まった。
先生の眠たくなる話し方を耳にしながら、さっきのことを思い返す。
恋人気分…って、何だろう。
彼氏いない歴年齢と同じの私。
昨年の今頃までは、サッカーに打ち込んでいて、恋愛なんて…瞳真へのドス暗い片想いしか味わったことがない。
瞳真への想いを自覚してからは、見かけたり、彼のことを想うとドキドキするけど…必ず『切ない』が着いて回っていた。
もちろん、そんな甘い気分なんて無縁で。
そんな『切ない』が付きまとわない、愛されるだけの甘い甘いお姫様気分。
それが、私の想像する恋人気分なんだけど…。
(………)
ガラにもない。



