「はいはい。そこの鬼畜、純情な乙女を弄ぶんじゃないわよ」



横川さんが表情崩さずパンパンと手を叩いている。

横川さんって、ポーカーフェイスだよね。落ち着いてる。



「…私があんたたち中途半端カップルに協力する理由のひとつ。それは…水口ばぎゃふんと言わせること」



ポーカーフェイスと言ったけど。

そう言った横川さんの口元は少し上がり、悪い笑みを浮かべている。



「水口ばぎゃふんと言わせるの、面白そうじゃない…?」

「と、瞳真を?」

「だってアイツ『星天高校の新しい王子様』って女子たちにキャー言われてるのに、顔色ひとつ変えないのよ…?」

「それは、瞳真はリアクション薄いし…」

「入学してから女子に告白されまくってるのに、断る理由が『部活に集中したいから、彼女は作らない』だなんて…調子に乗って気取ってるとしか思えない。DKなんてみんな性欲の塊のくせに…」

「はぁ…」

「でも、星月との約束すっぽかして女家に連れ込んで一晩中イチャこいてたんでしょ?ホントはヤリたいんだろって」

「………」

その過去は、まだツラい…。



「で、挙げ句の果てには村河とこっそりチューしちゃってんだもんね。そんなの調子こき極まりないでしょ。だから、私はそんなヤツばぎゃふんと言うところを見たいのよ…」



そう言って「フッフッ…」と肩を揺らして笑う。



横川さん、恐っ。