あれ、もしかしたら私、水瀬さんに褒められるの初めてかも!
いや、「悪くない」のどこが褒めてるんだって思うかもしれないけど、毎日毎日ダメ出しされていた身としては、肯定的なセリフ1つで天にも舞い上がれる気分で嬉しい。
ガッツポーズして、座ったまま足をバタバタ踏み鳴らすと。
「ははッ」
耳元で笑い声が聞こえた。
え? っと水瀬さんの方を見たけど、彼は口元に手を当てて目線をどこかに向けている。
「今、笑いました?」
「笑ってない」
「いや、笑いましたよね」
「しつこいぞ、今のどこに笑うところがあるんだ」
「だって、笑い声が聞こえたし」
「空耳だろ。ったく、人がちょっと話を聞いてやったからって調子に乗るな。帰る」
「え! もう!?」
「当たり前だ、ついて来んなよ」
立ち上がった水瀬さんの横顔を見て、おや? と思う。
私の気のせいだったら申し訳ないけど、ただの自惚れだって言われるかもしれないけど。
――――照れてません?