メイプルシロップたっぷりのパンケーキと珈琲の、遅めの朝ご飯を済ませ。
リブニットのチュニックにワイドパンツって、割りとラフな恰好に着替える。どうせ実家でちゃんとした礼装が用意されてるはずだから。
ノーカラーのロングコートを羽織りリビングに出ると、黒尽くめの凪がわたしを待っていた。

「・・・行きますよ」

「うん」

玄関の外に一歩出ると、目に飛び込んだ鱗雲が浮かぶ晩秋の蒼空。
もう10月も終わる。陽が当たらない通路の空気は冷んやりとして、少し首を竦めたくなった。

マンションの駐車場に停めてある黒のミニバンに乗り込み、出勤の時は前の道路を右に出るのを、左にウインカーを出して車は走り出す。
わたしと凪の間の空気も、多分いつもと変わらない。

今日は晶さんとのお見合いの日。
・・・ただそれだけのこと。