頭が痛い…

会社休んでもいいかな…

…………ダメだ。
今日は悪魔の異動だった、気が重い。
昨日は朝から瑠璃が来て、結婚のお知らせと、身代わりを頼まれた。

あー!最悪。


休みたいと思っても、時間は無情にも過ぎて行く。
慌てて、一昨日買ってきたスーツに手を通す。
姿見で確認…

口紅はベージュにした。化粧は派手すぎてもいけないから、ナチュラルに。後は眼鏡で顔を隠せば完了。鏡の中の私に、行ってきます!と言って会社に向かった。

「涼香!おっはよ」

会社入り口で美玲に捕まった。

「おはよ…」

「テンション低っ。どうしたの?」

「高い訳ないじゃない。低空飛行中よ」

そんな私の全身を頭から足の先まで、マジマジと見て

「スーツ買ったの?」

「当たり前じゃない」

「ブランド物じゃない」

「当たり前じゃない。どうせ、安物でもブランド物でもケチつけられるんだから、それだったら買えるぐらいの甲斐性があるぐい見せたいじゃない?あの、秘書課だよ?」

私の力説に、妙に納得した美玲。

「頑張っておいで。今日は有里華誘って待ってるから!」

「行ってくるね」

美玲と別れた後、直接行ってもいいものか悩んだ。とりあえず着替えてから総務部に顔出すかな…

「おはようございます」

いきなり声をかけられた。

「お、おはようございます、氷室室長」

声が聞こえた方を向くと、どこから見ても隙のない、氷室室長が立っていた。

「では、行きましょうか?」

私をスマートに案内しようとする氷室室長に、周りの女性社員から黄色い声が上がる。

「あれなに?なんであんな冴えない子が氷室さんといるの?」
「間近で見たいよねー」
「私も連れて行かれたいー」

様々…
秘書課室長ですら、この有り様…
恐るべし。

「行きますよ?」

「あ、はい」

慌てて、氷室室長の後をついて行った。