好きなひとを好きであることが
決して
好きなひとをしあわせにしない。


そんな状況に陥ったとき
ひとが取れる手段は
それほど多くないと思う。


あたしは、
まず逃げようとした。

好きなひとが不幸になるのを見たくないし

ふしあわせな彼を目にして、あたしが傷つくのが嫌だった。

でも逃げたって、どこかで影がほの見える。

細い細い糸が、
大切だって気持ちが、
まっすぐにまっすぐに、
彼へと伸びているんだ。


その糸の裁ち切り方を、あたしは知らない。



そう――いまは、まだ。