うつむきがちに、
教室の戸を開ける。


「ありゃ、あきちん?」


扉を開けた途端
図ったみたいなタイミングで
声がかけられた。

びくん、勝手に揺れる肩。

視線が、泳ぐ。

白っぽい朝のひかりにあふれた教室。

さびしくも見えるそこに、
たったひとり。

机に突っ伏して、
ヘッドホンですっぽり
耳をふさいでいたなぎが
むくりと身体を起こしたところだった。


「珍しい。
早起き、嫌いじゃなかったの?」

「……早起きじゃなくて、
寝てないのよ」


なぎの綺麗な顔を見て
ちょっとほっとした。

ほっとして
……口走りすぎた。


「え? ウソ!? 徹夜!?」


続くのは、
なぎの怒濤のツッコミ。