「待てよ。荘野、明姫」 落ち切った目線が、 転がった小石の数まで数えたところで。 かがんだ背中を声が飛び越した。 ――フルネーム? ずるずる目を這わせていくと、 スニーカーの爪先にぶつかった。 続けてのろのろ視界を持ち上げた、その先に。 まだ馴染みのないヒヨコ頭が、 にんまり笑顔で立っていた。 「おはよ。荘野明姫」 「……樹也?」 あたしはうろんな声で呟いた。