予想通り、レモンティは売り切れ。
代わりにナニを喰らわせてやろうかと、ボタンの前で指をさまよわせているとき、タイミングよく、とん、と肩を叩かれた。
ガコ。
指が勝手に、ボタンを押す。
「あ……」
「うっわ、ごめんな。間違って押しちまった?」
「いや」
「マジ? もしよけりゃ、俺、買い取るよ?」
聞き慣れない声が、早口でまくし立てる。
俺は声の主の顔を見ずに、両腕てんこもりのパックを落とさないように取り出し口に手を伸ばした。
「げ」
ピンクのパックが、指先に引っ掛かる。
――いちごミルク。
誰かさんが、大好きな。
「ホント、悪い。でもマジでソレ、くれない?」
しつこい。
八つ当たり気味にイラっとしながら、俺は落とした視線を持ち上げる。
がっちり、ソイツと目が合った。
「……」
「それ、俺のカノジョ、好きだから」
そこに立っていたのは、平均身長滑り込みアウト、という感じの細っこいヤツ。
数日前、明姫と一緒の姿を目にした、金髪アタマだった。