そのときの感覚は、ちょっと云い表せない。 金髪の樹也の姿に、ざざっと視界が広がる。 波音が、聞こえた。 目に映っても見えていなかった海が、広がる。 ぎゅっと囲われていた明良の腕のなかの世界が、ほどける。 糸玉がほどけるみたいに、全部がはじけた。 残ったのは。 あたし。 目を見張る明良。 そして――樹也。 ざらついた海の公園に、三人、立ち尽くしているこの、現実。