「遠くに、じゃなくて、ここから。
いなくなってしまおうか、明姫」


明良が、折り紙の端をくるりって、折り返すみたいに、表情を変えた。


「死んでしまおうか」


柔らかく、笑う。

それこそ紙みたいな、しかも特別製の薄い薄い紙みたいな、薄っぺらい笑み。

がつんって、アタマを殴り倒されたみたいな、衝撃があたしを襲った。


「だ……」


――駄目。


条件反射で、くちびるが紡ぎかけた言葉。

明良が傷つくなんて、駄目。

だって――だって、あたし、明良を守るんだから。

あたししか、守れないんだから。

これも、じいさまの呪いなのかな。

本能みたいに思って、でも、あたしは動けなかった。

だって、じゃあ代わりにどうすればいいのか、ぜんぜんちっとも、わかんない。

家に戻って、ただの兄妹として暮らす?

明良を、いつも怯えさせながら、あたしも怯えながら、秘密の恋人になる?

それとも――。

お互い、離れて、別の方向を向いて、忘れたふりして別々に生きる?


――どれもできないから、あたしたちはここにいるのに――。