「もうひとつ、試してないことがあるんだ」


明良が、つぶやく。


「行き先、変更してもいいか?」

「明良?」

「明姫」


明良が、あたしの名前を呼ぶ。

あたしは、それに、逆らえない。

――逆らうつもりなんて、ない。

あたしを、明良のきままに、振り回してくれるなら。

あたしは、なにも考えなくていい。

明良が、あたしの希みを、叶えてくれる。




「ふたりで、遠くに逃げようか」