「ナニ余裕さらしてんの!」
「余裕なんてないよ?
知ってるだろ。
俺と明姫は、【おなじ】なんだから」
低く、掠れた声。
耳元に落ちてくる。
「近寄んないでよ」
「俺は、明姫の言葉の裏も、わかってる」
一語一語、くっきり区切って明良がささやく。
すでに明良はがっちりベッドに乗り切って、あたしの上にのし掛かっている。
結果としてほぼ、押し倒され状態。
あたしは、泣きそうな気持ちになった。
五センチ上の、明良の顔。
「キスしたい」
――それは、あたしの気持ち。
「できるなら……もっと」
会わせ鏡みたいな、あたしたち。
重ねた瞳は真っ黒に潤んでいて、たぶんあたしと一緒だ。
「……なんてね」
ぱっと、視界が明るくなった。
するりと、なんにもなかったみたいに明良が身体をどける。
あたしが目をしばたかせているうちに、明良は床に転がっていたスカートを拾い上げ、放り投げた。
「ふがッ」
紺色サージは見事に、あたしの頭に。
暗い生地ごしに、憎たらしい明良の声が降る。
「でもまずは、学校だろ」