「――知らないッ!」
ぶんぶん首を振って、喚く。
「ずるい。ずるいよぉ……」
「ごめんな」
樹也が、耳許でささやく。
がたがたに荒れて暴れる感情が、身体を突き破って溢れる。
溢れて、涙になる。
泣きたいわけじゃない。
だけど気づけばあたしは、みっともなく泣きじゃくる生き物と化していた。
自分勝手な涙を、だらだら垂らすバカ女。
崩れたバランス。
崩れたシェルター。
崩れたモラトリアム。
最後に
なにひとつ変われなかったあたしが、残る。
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