「ちょっと、つめろよ」 指先であたしをよけさせて、樹也はソファの隙間に身体を割り込ませた。 年代物のソファが、鈍い悲鳴をあげる。 黄色く、ちょっと痛々しい感じに透ける髪。 尖ったあごや唇は意地悪そうにも見える。 癇の強そうな顔だ。 でも、浮わついた見た目よりは寛容かつ、理屈っぽい堅物だってことを、あたしは知っている。 ――いま、あたしにいちばん近い他人。 この一年で、あたしが得たもの。