Vanilla

雨だ。
シトシトと、静かな心地好い音。
最初は小雨だった。
それは少しずつ、粒が大きくなった。
そのうち激しく壁や窓に打ち付ける音が聞こえてきたから。
私は気を逸らそうとソファーに座りながら携帯を眺める。

携帯を眺めていたら、時刻はいつの間にか二十二時になっていた。
朝永さんはまだ帰って来ない。

もう夕飯を食べる時間では無くなってきた。
私はダイニングテーブルに並べていた料理を冷蔵庫に片付けると、気にしたくなくて電気を消してソファーに横になって眠ろうと試みる。

横になって瞼を閉じたが、リビングの壁に掛かっている時計の針の音が何故か大きく耳について、気になって眠らせてくれない。


激しい雨……
夜……
帰りを待っている私……


この状況が、あの日の電話の音を蘇らせる。