「信じられないの?」

真後ろから質問に答える声。

耳元で喋らないで。
吐息がかかって、くすぐったい!
モゾモゾする!

抱き締められてるし、心臓煩いし、吐息も気になるし、誰か助けて!


「えぇ」

そんな状況にお構い無しに、目の前の杉森さんは私の奥を見たまま低い声で返す。

なんかピリピリ、不穏な空気じゃない!?
杉森さん、朝永さんを睨んでない!?
でもとりあえず、


「朝永さんっ!離れてっ!」

錯乱状態の中、自分のドキドキが限界になって叫んだ。

貴方は異性に慣れまくっているだろうけれど、私は恋愛経験ゼロの初心者なんですよ!


『ガシッ!』

離れてと言ったのに、顎を何故か突然掴まれた。

そして一瞬で顎の向きを勝手に動かされる。