頭の中は混乱していたがとりあえず上半身を起こす。
初めて見た寝室。
ベッド以外、物が無い。
殺風景。
このベッドはダブルはありそう。

あ、と気付いた。

ジーンズにTシャツ。
そういえば昨日、お風呂に入っていなかった。
でも朝永さんを待たせて怒らせるわけにはいかない。


「スクランブルエッグとコーヒーとパン」

ベッドから降りると背中に聞こえた声。
振り返ったら朝永さんは私に背中を向けて立ち上がり、伸びをした。

それを作れって事ですか。

私は何も返さずにキッチンへ向かうと、まずコーヒーを探すことに。
確か開き棚に乾麺とかパスタが収納してあったなと思い出し、そこを開けるとすぐに見つけた。
瓶に入った粒状タイプのコーヒーが半分程入っている。

取り出すと作り方を眺める。
私はコーヒーは苦さが苦手で飲まないので作り方すら知らないから。

お湯に溶かすだけで簡単に作れるようだ。便利。
これもきっと前の女性の置き土産なんだろうな、なんて考えながら。


十分程でスクランブルエッグとパンを焼いて、コーヒーを作った。
朝永さんはリビングには出てこない。

私は今日もトレーにそれらを乗せると寝室まで運びノックする。