暫くそこにわざと居た。

これだけ杉森を牽制しておけば、つぐみにはもうこれで手は出さないだろう。




それから数日後の金曜日の昼休憩、社食に向かおうとしたら名前も知らない女に引き止められた。

「少し、お時間、良いですか……?」

強張った態度とこの空気、一瞬で女が言いたいことは分かった。
もし今ここで無いと言っても空気を読まずにまた来られたら面倒だ。
女につきあってやることにした。

「朝永さん、好きです」

廊下から逸れた階段の踊り場で予想通りの一言。

「俺、彼女いるから」

俺は即答で返す。
引き下がると思った女は悔しそうに顔を歪めた。

「でも朝永さん、本気じゃないでしょう?」

上目遣いと猫撫で声で俺へと手を伸ばしてきた。

ただただ不愉快な女だな。