『お仕事、今週もお疲れ様』
素早く出ると、すぐに耳に届いたのは優しい穏やかな声。
「しー君……」
彼の名前を溢しながら、涙が出そうになった。
この子は私の弟、小嶋静樹《こじましずき》、だから『しー君』。
歳は私の七つ下の高校一年生。
毎週金曜日、こうやって必ず電話をかけてきてくれる。
私がこの仕事を辞めたくなかったのは、この会社が大企業でお給料もボーナスも有給もしっかりと貰えるから。
しー君は携帯すら持っていない。
友人は全員持っているはずなのに、家計のためにか私が訊いても、携帯なんて要らないといつも返してくる。
『つぐみ、何か変……仕事で失敗でもした?』
黙っていた私を不思議に思ったのか、耳には訝しげな声が届いてきた。
「違うよ、ちょっと疲れただけ。しー君はどう?」
彼を心配させてはいけないと、私は溢れそうな涙を空いている左手の甲で慌てて拭いながら誤魔化した。
素早く出ると、すぐに耳に届いたのは優しい穏やかな声。
「しー君……」
彼の名前を溢しながら、涙が出そうになった。
この子は私の弟、小嶋静樹《こじましずき》、だから『しー君』。
歳は私の七つ下の高校一年生。
毎週金曜日、こうやって必ず電話をかけてきてくれる。
私がこの仕事を辞めたくなかったのは、この会社が大企業でお給料もボーナスも有給もしっかりと貰えるから。
しー君は携帯すら持っていない。
友人は全員持っているはずなのに、家計のためにか私が訊いても、携帯なんて要らないといつも返してくる。
『つぐみ、何か変……仕事で失敗でもした?』
黙っていた私を不思議に思ったのか、耳には訝しげな声が届いてきた。
「違うよ、ちょっと疲れただけ。しー君はどう?」
彼を心配させてはいけないと、私は溢れそうな涙を空いている左手の甲で慌てて拭いながら誤魔化した。



