「行こ」

すると勝手に俺の腕に手を回してきた笑顔の穂香。

その手にゾッと鳥肌が立った。

勘違いすんな。

俺は勢いよくその手を振り払うと、穂香はキョトンと不思議そうな顔をした。

「秋哉?」

「お前とは行かない」

拒絶すると珍しく穂香の顔が歪んだ。

「あの子、秋哉の誕生日すら知らないし、秋哉の家を出るんでしょ?」

上目遣いで見られようが、誘うように身体を触られようが、何とも思わない。

もう真っ赤なルージュにも惑わされない。

俺の心にはもうお前はいないんだよ。

だからどんな顔も言葉もどうでも良い。

「お幸せにって言っただろ。じゃあな」


穂香に苛々させられた最悪な誕生日。

つぐみと会ったら、引っ越し日が決まったと言われるのが怖くて、家に帰る気にはなれない俺はホテルに泊まった。