「つぐみちゃん、秋哉の誕生日知らないでしょ?だから私がお祝いしてあげる」

穂香はカウンターに座る俺の隣に勝手に座った。

「……お前、俺の相手してて良いの?」

俺は隣を見ずに返す。

「私は秋哉が一番だもん」

コイツはまだそんなことを言ってんのか。

「伊藤、何も知らないだろ」

「知らない方が良いこともあるでしょ?」

穂香と話すと溜め息しか出ないな。
なんで俺、コイツが好きだったんだろ。

「つぐみちゃんから聞いたよ?つぐみちゃんは偽物の彼女で、秋哉には忘れられない彼女がいるって」

つぐみがバラしたようだが、もう今はどうでも良い。
つぐみのお陰で穂香から俺の心は離れてくれたから。

「忘れられない彼女って私のことでしょ?」

自信ありげな声音にイラッとして、手の中にあるグラスの酒を一気に飲み干した。

「帰る」

グラスを乱暴にカウンターに置くと穂香を見ずに言ってスーツの内ポケットから財布を出しながら立ち上がる。