「先に寝て下さいよっ」

「まだ今日のご褒美あげてないし」

「そんなの、要りません!お風呂に行きますっ!」

つぐみが拒否して踵を返した。

「待て。お前、昨日ソファーで寝ただろ」

リビングの扉の手前で足を止めたつぐみの肩が図星ですと言わんばかりに跳ねた。

「ちゃ、ちゃんとベッドで寝ましたっ。私がベッドに入った時、朝永さん眠っていたから気付かなかったんじゃないですか?」

心配してやってんのに背中を向けてその態度かよ。

「ご主人様が気付かないとでも思ったわけ?」

苛ついた俺はつぐみへと向かって行く。

「オイ、聞いてんのか?」

真後ろで声を掛けると、

「お風呂行きます!」

逃げやがった。

しかもベッドで寝ろと言ったのに一向に来ない。
リビングへ行ってみると真っ暗なリビングのソファの上には黒い塊。
電気を点けるとペラペラのタオルケットを包んでいるつぐみの姿をハッキリ捉えた。

「俺に反抗するとは良い度胸してんな、つぐみ」

タオルケットを剥ぎ取ると放り投げた。
寒いのだろう、仕事に着ていく薄い長袖のカーディガンを着ていた。

「起きろ」

つぐみが上半身を起こした。

つぐみに両手を伸ばすとあからさまに肩をビクつかせた。

その反応に勝手に傷付く。

つぐみが着ているカーディガンを脱がすと現れたのはやっぱり半袖のパジャマ。
つぐみの膝裏と背中に手を入れると抱き上げる。
「きゃっ」と小さく声を上げたが、無視してリビングの電気を消して寝室へ。
そしてベッドにつぐみを投げるとトレーナーを掴み、上に跨り、バンザイをさせると上からトレーナーを被せて着せた。

「ほんとメンドクセー女。これが今日のご褒美だからな」

そう言って布団に潜るとつぐみに背中を向けた。

心配かけさせんな。




「あの、今日は私寄りたい所がごさいまして、一人で帰ってもらえますか?夕飯は作っておいたので温めるだけですので」

次の日の朝食中、つぐみがびくびくしながら言った。

「どーぞ」と短く返した。

やっと長袖を買いに行くようだ。


夜、買い物袋をぶら下げて帰ってきたので安心した。


「パジャマ買ってないのかよ」

俺が昨日着せたシャツを着ていたから思わず訊くと、つぐみはビクッと身体を竦める。

「朝永さんが服、くれましたし……」

つぐみはこちらを見ずにタグを切りながら返したが助かった。
嬉しくて今、変に顔がニヤついているから。


そのせいかベッドに先に入ったつぐみを調子に乗って抱き締めてしまった。




トイレットペーパーを巻かれた何か。

「お前、生理か」

背中にナプキンを隠した。

「女性にそういうことをハッキリ言わないで下さいよっ!デリカシーって言葉、知ってますか!?」



「今日は俺が晩ご飯作るから、無理するなよ?」

朝永さんを好きなのに、作り物の優しい朝永さんが不気味すぎて気持ち悪いなんて思う私はおかしいのでしょうか?


しかもそれだけで終わらず。


「ご飯、ちゃんと食べれたか?」

お昼休憩が終わる直前に現れて、

「これ、腹に貼って」

貼るホッカイロを差し出してきた心配顔の朝永さん。


「うーん……朝永さん、つぐみを好きだと思うんだけどなぁ」

そんな朝永さんを隣で見ていた愛佳ちゃんは顎に指を添えながら馬鹿なことを眉を寄せて呟いた。


私を好きなら、あの時気分なんて言えるわけがないから。