朝永さんは特定の女性を作らない。

ということは、どうやら常に女性を連れ込んで料理を作らせているようだ。

それに朝開けた冷蔵庫には醤油やソースなどの基本的な物ばかりでなく、豆板醤など少し料理をかじっていないと買わないような調味料まで入っていた。

女の影しかない。


こんなにも尽くす女性がいてくれるなら、私でなくても良いじゃない。




モヤモヤしながらも十九時半に私はなんとか食事を作り終え、二人掛けのテーブルに食事を並べた。
朝永さんはこの家に居るはずなのに、出ても来ない。

……呼びに来いと言うことなのだろうか。

私は閉ざされている寝室に向かうと思い切って扉をノックした。

「あ、あのっ、ご飯、出来ましたっ」

朝永さんに話し掛けるのが怖い私は声が上擦った。

「ここで食う。持って来い。ってかお前、言いつけ守ってないだろ。掃除と洗濯やってねぇ」

扉の向こうから聞こえてきた声に私のこめかみにはピキッと青筋が立った。