驚いた私は口から「きゃっ!」と声が漏れて、持っていた傘と鞄を落とした。
その後すぐにドサッ!と大きな音。
朝永さんが持っていた荷物を足元に落とした。

バタンと玄関の扉が閉まる音が聞こえると暗闇の中、壁に押し付けられた。
驚いてぎゅっと目を瞑ると、唇には生温かい感触。

朝永さんが私にキスをしてきた。

驚きすぎて目を見開く。
電気も点いていない玄関。

何も見えない。
分かるのは、朝永さんの唇の感触だけ。

好きな人が私を求めている。

でも嫌だ、こんなキス……。

感情なんてない生理現象に任せている『気分』のキスなんて……。


……でも、拒めない。

私が今拒否をしたら、朝永さんは私じゃない女性を求めに行くから。

拒みたいけれど拒めない。