次の日の朝。


「おはよー、つぐみちゃん!」

会社まであと数分の所で突然肩をポンと叩かれて聞こえてきたのは朝から明るい声。

「……おはようございます、穂香さん」

そんな彼女とは正反対の私。

「月曜の朝から暗い!ってそれより一人なの、珍しいね。朝永君は?」

穂香さんはまともに眠れなかったのがダダ漏れの目の下にクマがついた私の顔を見た後、辺りを見渡しながら訊かれたくなかった事をサラッと言われてしまい、私は彼女から顔を逸らして思わず沈黙を作る。

「朝永君と喧嘩したの?」

その言葉に益々気は沈んでいく。

だって、喧嘩なんてしたことない。
だって私達、そこまでの仲じゃない。

「……昨日、朝永さん、帰って来なかったんです……」

蚊の鳴くような声で溢すと穂香さんは重い溜め息の後、

「他の女の所に行ったのよ」

とサラリと言った。

胸に鈍い痛みが走る。