Vanilla

「私は秋哉がその人を好きだと知っていて強引に付き合ってもらったの。私は何度もあの食器を捨ててと言ったわ。でも彼は捨てなかった」

「……」

「もう分かるでしょ？私の言いたいこと」

分かってしまったが、私は言葉を出せなかった。


「やっぱり誰もペアの食器の彼女には勝てないってこと。貴女も傷が深くなる前に別れた方が良いよ」

最後にそう言い残して名前も知らない彼女は私の前から去って行った。


「何、今の話……朝永さん、好きな人居るってこと？」

隣の呆けた顔の愛佳ちゃんが言う。

「そう、みたいだね」

私はあとは鞄を掴むだけの状態だったが、鞄を掴む気力を無くした。
勇躍していた私が一切消えた。

「じゃあ、何でつぐみに近付いたの？」

「……」

朝永さんは女性との揉め事とかが面倒だからとは言っていた。
それが本当なのかは理由は分からない。