気分で私を拾ったのに、じゃあ何で私の手を引いているの?

私、期待しちゃいますよ……?




「お前は俺の奴隷ってこと、忘れんな」


背中しか見えない朝永さんから出てきたその一言。

崖の手前に立っている気分。

一歩でも踏み込めば、一気に崖の下。

そんなギリギリな場所。

崖の下まで充分落ちられる言葉だった。

寸前で落ちなかったのは、何故か手が繋がれたままだから。


「お前いつもさっきの女友達と食べてるだろ。でもさっき断ってたな」

会話が再び飛んできた。
私達は先程通って来たエレベーターの前を過ぎた。

「弁当はオフィスだろ?」

オフィスへの扉の前、足を止めた朝永さんとやっと目が合った。