「何、突っ立ってる」

「きゃっ!」

ここまで来て、闇を見つめながら中に入ることを躊躇していたら、朝永さんに突然腕を引っ張られて。

『ドサドサドサッ!』

動揺した私は両手に持っていた荷物を全て落としてしまった。

心臓が更に速度を増してる。

だって腕には圧迫感。

そして至近距離から漂ってくるのは知らない香り。

暗闇が緊張感を更に掻き立てる。


「緊張してんの?」


私の心の中がバレてる。

でも私は何も言えなかった。

というより、答えられなかった。

男性に手を握られたことが初めてで、その手に意識が全て持っていかれていたから。