怖いが私は逆らうことなんて出来ないし、周りの景色を気にすることも出来なくて、タクシーにじっと座っていた。
その間、朝永さんはずっと無言。
沈黙に耐え続けていると、十五分後にやっとタクシーが停まり、朝永さんは漸く沈黙は破った。


「払えよ」

窓枠に肘をつき、頬杖をついて前を見ながら一言。

やっと喋った言葉が、払え?
しかもタクシーを勝手に拾ったのは貴方で。
なんて不満が込み上げてきた時、鋭い眼光と目が合って。


「文句あんのか?」

「ありませんっ」

私はせかせかと財布を出す。

スーパーで約千円、タクシーで四千円……今の私には痛すぎる出費。


私がお金を払い、タクシーの扉が開くと、朝永さんは先程と同様、勝手に降りるとスタスタ歩いていく。
私は運転手さんにお礼を言って、鞄と紙袋と重たい荷物を抱えて降りると小さくなった朝永さんの背中を必死に追い掛ける。