兄のおかげで少しだけ気持ちが軽くなった分、今の私を客観的に見る余裕が出来た。私は結局何を求めているのか、何を恐れているのか、このままでは嫌だと思う自分が居るのなら、逃げずにしっかり今の私と向き合わなければならない。

私の変化や、向き合ってきた姿勢に対して、兄は褒めて認めてくれた。変に気を遣って慰めるでもなく、先人の知恵を与えるかのようなアドバイスをしてくるでもなく、ただ事実に目をやり結果としてその成果を挙げてくれた兄の言葉が、ストンと私の中におさまった。一番自分を納得させる事が出来た、というか。

自分の不甲斐なさに落ち込むだけだった私に、私にしては頑張ったのだという評価を与えてくれた事で、それがすごく私の心を…まぁなんというか、慰めてくれた。ダメだったかもしれないけれど、良い事もあったじゃない、なんて。

実際、私が何をどれだけ頑張れたのかなんて分からない。頑張った自覚が無いし、私自身の力では何も出来ていないと、改めて思い返せば返す程に虚しい気分になる。全てが私の力だけではない。私は人に恵まれたのだ。私が良い方に変化出来たのは、私の周りに居る人々のおかげだった。人々…というか、特に彼。瀬良君。

瀬良君との出会いが、私の変化の始まりだった。瀬良君が私を自分の世界の方へと引っ張り出してくれて、守って籠ってばかりの私が外の世界へ目を向けて、足を踏み出す力をくれた。決めつけて目を背けていた世界はこんなにも広く、こんなにも賑やかで、こんなにも優しかった。彼のおかげだった。彼が居たから私は変わる事が出来た。…しかしそれは、彼にとっては不必要な事だったのかもしれない。

大きな変化の一つとして挙げるとしたらそれはもちろん、瀬良君の事が好きになってしまった事だ。けれどそれが嫌われた理由では無いと思う。きっと瀬良君は私が彼の事を好きでいても迷惑には思わないと思う。好かれるのが嫌だったのは束縛される事に直結すると思っていたからだと答えが出ている限り、私が彼を好きになったからといって、それが嫌われる理由にはならない。では、何が彼をそうさせたのか。