私達二人の関係性を、正確に捉える事は難しかった。けれど、彼の求めるものに応える事が私の役目なのは、結局初めから最後まで変わらなかったのだろうなと思う。変わったのは、もしかしたら私の方なのかもしれない。彼が知らない間に変わってしまったのでは無くて、私が彼にとっての理想から遠ざかってしまったのでは無いだろうか。私の変化…どう考えても目を反らせない大きなものが、一つあった。
「私ね、その人の事が好きだったの」
自覚しないで告げた言葉に、あの時の彼は何を思ったのだろう。私はあの時、一番の友達だと言われたそれを受け入れて、素っ気なくなった彼との関係性を見直して、全て納得した上で他人だと告げたのだけれど、どうやらその言葉が彼を傷つけた。私は間違えて、彼に嫌われてしまった。
「初めて好きになった人だったんだけど間違えちゃって、振られちゃった」
結局はたったそれだけの事だった。最後には嫌われてしまったけれど、その前にもう振られているのだから、未練がましく執着をみせた私が全ていけなかったのだ。言葉にしたら一言で終わってしまう、ありきたりな詰まらない悩み。こんなに悩んでいる事の答えがそれだなんて、なんだか笑えた。よくあるただの高校生の浮かれた恋愛事情だ。こんな事で時間を割いてしまって、本当に兄に申し訳ない。
「…くだらなくてごめんねお兄ちゃん、それだけなんだ。だから大丈夫」
情けな過ぎて、無理矢理にでも笑って誤魔化した。たかが高校生の恋愛事情なんて、兄にとってはなんの興味も持てないだろうし、どこまでもどうでも良い話だろう。朝の貴重な時間をごめんねと、私は私で学校へ行く準備に取り掛かかろうとキッチンを出た、その時だった。
「おまえさ、そうやって自分の中で結論づけて終わりにすんの良くないよ」
兄が言葉で、私を引き止めた。おずおずと俯いていた顔を上げると、兄は真っ直ぐ真剣な表情で私の事を見つめていた。
「おまえがどう思ってるかは知らないけど、俺はおまえの事よく分かってるつもり。だから人付き合いが苦手になってたおまえに沢山友達が出来たってのはすごい事だし、俺らがあんだけ言って聞かせたせいで男に期待出来なくなってたおまえに好きな奴が出来たなんて、それこそ有り得ないくらいの変化だろ。そんなすごい事を当たり前のよくある事みたいに言い捨てんなよ」



