良い人だ。皆、私に笑顔を向けてくれるようになったし、何気無い会話だってしてくれる。気遣ってくれてる人が周りに増えて、一人の時間が減って、すごく嬉しくて、すごく安心して…それなのに、

「でもね、すごく寂しくて」

「寂しい?」

みんな良い人なのに、一人の時間が減ったのに、それなのにそこに続く私の気持ちは矛盾していた。

「一人の人とね、急に距離が開いて…それがすごく寂しくて、すごく悲しくて…なんでだろう。他の人がどれだけ私に気を遣ってくれても、全然気持ちが晴れなくて」

皆も私と瀬良君の様子が可笑しい事に気がついてくれて、そっと相談に乗ってくれようとしたり、何気なく間に入ろうとしてくれたりした。もちろん朋花ちゃんもそうだ。皆の気遣いが嬉しかったし、有り難かった。…それなのに、私は皆に瀬良君との事を相談出来なかった。頼ろうと思えなかったのだ。

誰に何を言っても本当の意味では分かって貰えないような気がして、私自身も誰かに力を借りようなんて思ってもいなくて、何よりもこれは私と瀬良君の問題で皆には関係の無い事で…なんて、こんな風に力になってくれる人をまるで邪魔者のような扱いをする自分が最低だと思う。でも今はもう、皆よりたった一人が私の中を占めていて、その人の事しか考えられなかった。私とその人の間に他の人が介入して欲しくなかった。

「…みんなと仲良くなれて嬉しかったはずなのに、今はもうその人が一人居れば良かったような気持ちになってるの。みんなと仲良くなった今より、その人が私だけを見てくれていた時の方が幸せだったような気がして…私が欲張ったせいだったのかもしれない。私は贅沢になっていたのかもしれない」

こんな風に彼と疎遠になっていくとは思わなかった。彼が私に興味を失ったのなら分かる。その心構えはずっと前からしてきたし、それだったならもう少し前向きに周りのみんなを頼って、傷を癒していけたように思う。でも、全ては私のせい。私が原因で、彼は私から離れていってしまった。