大事にされたいのは君


きっと来る、そう確信していた。そしてそれは、私がそこに着いてまだ5分も経たない頃合いだった。

「…どうしたの?」

やっぱり、彼は来た。

「今日はアイツらと一緒じゃないんだ?」

アイツらとって、お昼を一緒に食べるその中にいつも自分も居るくせに、まるで自分は居ないかのように語る。やっぱり何か可笑しい。

「もしかして、アイツらと何かあった?言って、俺に」

それでも、こういう所は変わらない。私の事を心配して、気遣って、自分を頼るように言ってくれる彼は変わらない、私にとっての瀬良君だ。瀬良君のままだ。

大事に想ってくれて、必要としてくれて、私の事を特別扱いしてくれるーー

ーー本当に?


「君はもう、私に飽きたの?」

思わず言葉にしていたのは、今の今まで一言も頭に浮かんでいなかった言葉。しかしこれが私の本音だと、声に出した瞬間迷わず埋まってしまった私の回答欄に納得した。本当はきっと、心の中で答えは出していたのだ。ただ、気づかないようにしていただけで。

だって、特別なのは私だけじゃない。

「飽きたって、モノじゃ無いんだから」

そんな私の言葉に彼は驚いたように、それでいて呆れたように答えた。モノじゃないと彼は言うけれど、でも私の気持ちは彼にとって何の関係も興味も無いものなのだから、そんなのモノ扱いと変わらないじゃないか。彼の気持ち一つで大事にも捨てられもする。

「だって、最近すごく素っ気ないから。もう嫌いになったのかなって」

「何言ってんの、俺が吉岡さんの事嫌いになる訳ないじゃん」