大事にされたいのは君


最近の瀬良君は、他の人が居る時にはそっとその場を去る。それでも二人の時間は大切にしてくれていると思っていた。会っている間の時間が段々短くなってきている事も、約束の頻度も少なくなって来ている事にもとっくに気づいている。それでも、朝と放課後の時間は取ってくれていたし、誰かが居たとしても、一言は絶対に声を掛けてくれていた。

それなのに、ついに見て見ぬ振りをされてしまった。あからさまな態度、というものが、ついに現れてしまった。

これはやっぱり、そういう事なのだろうか。もう終わりなのだろうか。終わりとは、こんなにあっさり迎えるものなのだろうか。私達の関係はこんなものだったのだろうか。

…私達の関係、か。

言葉にしようにも名前のないそれに、私は今までの全てが泡となって消えていくように感じた。全ては幻だったのかと。私の妄想が生み出した絵空事でしかなかったのかと。どうせ私は、ただの沢山居る友人の中の一人。

…でも、一番好きだと言ってくれたのに。

あの日の言葉に残念がったり、縋ったり、自分でも勝手だと思う。でも友達を受け入れた今だからこそ、そこだけは自信を持てる所。その言葉はまごう事なき彼の私への想いの真実である。そうならば、きっと来てくれるはず。

そう信じて、私は行動に移した。正直、くよくよしていても仕方がない。そろそろ彼のこの態度にもうんざりしてきた所だった。彼の正直な気持ちが知りたい。もし本当に私と関わりたくなくて、本当は二人でも会いたくもないとしたならば、きっと来てはくれないだろう。見て見ぬ振りをしたとしても誰にも何にも害はない。

「じゃあ行って来る!ごめんね由梨ちゃん!」

チャイムと同時に慌てて教室を出ていった朋花ちゃんを見送って、私もひっそりと教室を出た。今日の昼休みは朋花ちゃんが居ない事は事前に知らされていたから、私の中で決心するのは早かった。向かう先は、以前よく利用していた屋上へ向かう階段だ。私が一人でお昼ご飯を食べる時に向かう場所。そしてそんな私をいつも彼が見つけてくれる場所。