「でもこんなにあると何作るか考えんのも楽しくていいな。俺実は料理得意」
「え、意外」
「だろー?暇を持て余したから前向きに取り組んだ後、特技になるという」
「じゃあ仕事のお母さんの代わりに夕飯作ったりしてるの?」
「代わりっつーかなんつーか。まぁ自分の為が主にかなー。コンビニばっか行ってる訳にもいかねーし」
「そうなの?自分のご飯をいつも作ってるの?でもスーパー初めて来たの?」
「そ。うちネットスーパー派だからさ」
「…なるほど…」
ネットスーパーを使った事が無かったけれど、とっても便利そうだなとは思った事がある。でも少しお高いイメージがあって、それ以上は手を出していなかった。いいな…足りなくなったら瀬良君が買い足しているのだろうか。なんだか、どんどん知らない瀬良君が顔を出してきて、質問が止まらない。
「じゃあお家の家事も瀬良君がしてるの?」
「軽い片付けぐらいはするけど、基本うちは業者任せだから」
「ぎょ、業者?」
「昔から定期契約してる業者が居て、大体居ない時とかに勝手にやってくれる。飯も昔はそれだったんだけど、今は俺一人の方が多いからやめた。毎日毎食来られても嫌だし、作んの好きだし」
なんて事無いように語られる彼のプライベートな部分に、私の口からは感嘆の声にも似た相槌が自然と溢れた。また知らない彼を知った瞬間だった。きっと幼少時代から付き合いのある三好君は知っているのだろうけれど、私にもその部分を晒してくれた事がとても嬉しかった。それだけ内側に踏み込ませてくれたのかなと、胸の奥がほっこり温まるのを感じる。



